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2011-06-25

「シッダールタ」

シッダールタ (新潮文庫)シッダールタ (新潮文庫)
(1971/02)
ヘッセ

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悩める時代、ヘッセの書物にはどれだけ救われたか知れません。ヘッセに限らず、いろいろな書物に助けられ支えら勇気づけられました。

しかし喉元すぎればなんとやら。最近はヘッセを全然読んでいなかった。それなのに突然読みたくなったのは何か当時につながる気持ちの変化があったから? それは震災が影響しているのかな。そうかもしれないし、そうではないかもしれません。あるいは未来への予感かもしれません。

ヘッセに救われたといっても、すべての著作を読んだわけではなく、この「シッダールタ」は以前から気になりつつも、今回初めて読みました。

読んで最も心に残ったのは、シッダールタの導き手、川の渡し守であるヴァズデーヴァについてです。

シッダールタは渡し守に自分の素姓と生活を、きょう絶望したあのとき眼前に見たままに語った。深夜まで彼の話は続いた。
ヴァズデーヴァは注意深く耳を傾けた。素姓と幼年時代、いっさいの学習、いっさいの探究、あらゆる喜びと苦しみ、すべてを傾聴し、心にとり入れた。これはこの渡し守の美徳の中で最大の美徳の一つだった。つまり彼は傾聴することを心得ている点でたぐいまれであった。ヴァズデーヴァは一言も発しなかったけれど、話者は、相手が自分のことばを静かに胸を開いて待ちつつ摂取してくれるのを、一言も聞きもらさず、一言もせっかちに待ち受けることをせず、賛辞も非難もならべず、ただ傾聴するのを感じた。そういう傾聴者に告白するのは、そういう相手の心の中に自分の生涯を、探究を、苦悩を沈めるのは、どんな幸福であるかを、シッダールタは感じた。


天然カウンセラー。天然コーチ。こういう風に話を聴いてもらったことが生涯にどれだけあるでしょうか。いや、そもそもそんな経験ありますか?

聴き手が話者をコントロールするようなとき、話者は聴き手への絶望的な断絶感のあと、深い軽蔑や憎しみすら抱くこともあるかもしれません。

そんな疲れた日の夜は、この本をゆっくり読み返して、ヴァズデーヴァに隣に腰掛けてもらっているつもりになりましょう。そして私も誰かにとってのヴァズデーヴァになれますように。


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プロフィール

えみえみ

Author:えみえみ
パーソナルコーチ 、研修コーチ
国際コーチ連盟ACC
米国NLP(TM)協会認定NLP(TM)マスタープラクティショナー
モンテッソーリ教育、アドラー心理学、ブレインジム、フォーカシング

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